メンズグルーミング市場規模と成長トレンド分析

メンズグルーミング市場規模のグラフ

日本のメンズグルーミング市場は、過去数年間で驚異的な成長を遂げており、ビジネスチャンスが拡大し続けています。このページでは、市場規模の詳細な分析と成長トレンドについて報告します。

市場全体の規模推移

矢野経済研究所の調査によると、国内メンズビューティー市場(男性用化粧品、メンズエステ、理美容家電など5市場の合計)は、2020年代に入って急速な回復と成長を示しています。2020年は新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、メンズエステや理美容サービスが大きな打撃を受け、市場全体が縮小しました。

しかし、2021年から回復基調に転じ、2022年度には前年度比3.7%増の2,100億8,000万円に達しました。2023年度にはコロナ禍前の水準を超える2,158億円に到達すると予測されており、市場は明確な成長期に入っています。この成長は、一時的なリバウンド効果だけでなく、構造的な需要の拡大を反映しています。

男性化粧品市場の急成長

市場全体の中でも、特に男性化粧品(基礎化粧品、メイクアップ化粧品、日焼け止め)分野の成長が顕著です。株式会社インテージの調査によると、この分野は以下のような成長軌跡を描いています:

  • 2017年: 推計249億円
  • 2019年: 推計275億円
  • 2022年: 推計376億円(2017年比1.5倍)
  • 2024年: 推計497億円(前年比114.8%、2019年比1.8倍)

特に2023年から2024年にかけての成長率は驚異的であり、単年で14.8%の成長を記録しました。これは、メンズコスメ市場が成熟期に入りつつある中でも、新たな需要層の開拓や製品カテゴリーの拡大により、力強い成長を維持していることを示しています。

カテゴリー別の成長分析

男性化粧品市場の中でも、カテゴリーによって成長のペースと規模が異なります。

基礎化粧品(スキンケア)

基礎化粧品は市場の約9割を占める最大のカテゴリーであり、2024年の市場規模は438億円に達しています。このカテゴリーには、化粧水、乳液、美容液、クリーム、洗顔料、クレンジングなどが含まれます。

特に成長が著しいのは美容液市場で、2019年比で約5倍に拡大しています。これは、男性のスキンケアが単なる清潔維持から、保湿、アンチエイジング、美白といったより高度な目的へと進化していることを示しています。

メイクアップ化粧品

メイクアップ化粧品は、基礎化粧品に比べると市場規模は小さいものの、成長率では上回っています。BBクリーム、コンシーラー、ファンデーション、アイブロウ、リップクリームなどの製品が含まれます。

特に若年層を中心に、肌の色ムラを整えたり、クマを隠したりするためのベースメイク製品の需要が拡大しています。「女子力男子」や「ジェンダーレス美容」といったトレンドの影響により、男性がメイクアップ製品を使用することへの心理的抵抗が低下しています。

日焼け止め

日焼け止め市場も着実に成長しています。従来、日焼け止めは主にアウトドアスポーツやレジャー時に使用される製品でしたが、現在では日常的なスキンケアの一部として認識されるようになっています。

紫外線が肌の老化やシミの原因となることへの認識が広まり、また気候変動による気温上昇や紫外線の強まりが、日焼け止めの使用を後押ししています。特に、化粧水や乳液にUVカット機能が組み込まれたオールインワン製品の人気が高まっています。

地域別の市場特性

都市部

東京、大阪、名古屋などの大都市圏では、市場の成長が特に顕著です。ビジネス環境における清潔感の重要性、美容情報へのアクセスの容易さ、多様な製品が入手可能な小売環境などが、高い需要を支えています。

また、都市部では大気汚染やPM2.5への懸念から、環境汚染対策を謳ったスキンケア製品への関心も高まっています。通勤時間が長いビジネスマンが多いことも、簡便なオールインワン製品の需要を後押ししています。

地方都市・郊外

地方都市や郊外でも、メンズグルーミング製品の普及が進んでいますが、都市部に比べると浸透のスピードはやや緩やかです。ただし、ECチャネルの拡大により、地域による情報格差や製品入手の困難さが解消されつつあり、全国的に市場が拡大する傾向にあります。

年齢層別の市場分析

20代

最も美容意識が高く、新しい製品やトレンドを積極的に取り入れる層です。SNSやYouTubeから情報を収集し、インフルエンサーの推奨する製品を購入する傾向があります。メイクアップ製品への抵抗が少なく、BBクリームやコンシーラーなどの使用率が高いのが特徴です。

30代

ビジネスシーンにおける清潔感の重要性を強く認識しており、スキンケアを日常的に実践する層です。肌の変化(乾燥、毛穴、テカリなど)を実感し始める年代であり、基礎化粧品への投資意欲が高まります。コストパフォーマンスを重視しつつも、効果のある製品には一定の金額を支払う用意があります。

40代以上

従来はメンズグルーミング市場の主要ターゲットではありませんでしたが、近年急速に需要が拡大しています。年齢に伴う肌の悩み(シワ、シミ、たるみ)への対策として、アンチエイジング製品への関心が高く、また健康志向の高まりもスキンケア需要を後押ししています。

富士経済の調査によると、中高年層におけるスキンケア意識の高まりが、2024年のメンズ整肌料市場の前年度比6.4%増という成長を支えています。

価格帯別の市場セグメント

マス市場(1,000円~3,000円)

ドラッグストアや量販店で販売される製品が中心で、市場の最大セグメントです。花王の「メンズビオレ」、マンダムの「GATSBY」などの大手ブランドが強い存在感を示しています。手頃な価格で基本的なスキンケアができることから、スキンケア初心者や学生、若手ビジネスマンに支持されています。

ミドル市場(3,000円~7,000円)

D2Cブランドや化粧品専門店で販売される製品が多く、品質とコストパフォーマンスのバランスを重視する層に人気です。BULK HOMME、ORBIS MR.、資生堂の「SHISEIDO MEN」などがこのセグメントで競争しています。

プレミアム市場(7,000円以上)

百貨店や専門店で販売される高級ブランド製品が中心です。資生堂、コーセー、SKIIなどの高級ラインや、海外ブランドがこのセグメントを構成しています。効果や品質を最優先し、価格は二の次とする富裕層や美容意識の極めて高い層がターゲットです。

メンズグルーミング市場には明確な季節変動があります。春から夏にかけては、紫外線対策や皮脂コントロールを目的とした製品の需要が高まります。日焼け止め、油取り紙、さっぱりタイプの化粧水などの売上が増加します。

一方、秋から冬にかけては、乾燥対策を目的とした製品の需要が高まります。保湿力の高いクリームや乳液、リップクリームなどの売上が増加します。

ただし、近年では季節変動の影響が相対的に小さくなっています。これは、年間を通じてスキンケアを習慣化する男性が増えていることを示しています。

コロナ禍の影響と回復

新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、メンズグルーミング市場に複雑な影響を与えました。マイナス面では、メンズエステサロンの休業や客足の減少、外出機会の減少による化粧品需要の一時的な落ち込みがありました。

しかし、プラス面も多くありました。オンライン会議の普及により自分の顔を画面で見る機会が増え、肌の状態への関心が高まりました。また、外出自粛により自宅での美容ケアに時間を使えるようになり、スキンケアを新たに始める男性が増加しました。

結果として、2021年以降、市場は急速に回復し、2023年にはコロナ禍前の水準を超える成長を達成しました。パンデミックは、長期的には男性の美容意識を高め、市場拡大を加速させる効果をもたらしたと評価できます。

国際比較

日本のメンズグルーミング市場を国際的に見ると、まだ発展途上にあります。韓国では男性化粧品市場が非常に大きく、K-beautyとして世界的にも知られています。韓国の男性は日常的にスキンケアやメイクアップを行うことが一般的で、市場規模も日本を上回っています。

欧米では、男性用グルーミング製品の歴史が長く、シェービング関連製品や香水、デオドラント製品などを含めると、極めて大きな市場を形成しています。ただし、スキンケアやメイクアップに関しては、日本や韓国の方が先進的な面もあります。

世界的には、男性用グルーミング製品市場は年平均6-8%程度の成長が予測されており、2030年代には現在の2倍以上の規模になると見込まれています。日本市場もこの世界的なトレンドの一部であり、今後も成長が続くと予想されます。

今後の成長予測

矢野経済研究所は、2027年度のメンズビューティー市場を2,279億5,000万円と予測しています。これは2023年度の予測値(2,158億円)から約5.6%の成長を意味します。年平均成長率は約1-2%程度と緩やかですが、着実な拡大が見込まれています。

より長期的には、若年層の美容習慣の定着、中高年層への更なる浸透、製品カテゴリーの拡大、テクノロジーを活用した新サービスの登場などにより、市場は持続的に成長すると予想されます。2030年代には、国内市場が3,000億円を超える可能性も指摘されています。

メンズグルーミング市場は、社会の価値観の変化、テクノロジーの進化、グローバルなトレンドの影響を受けながら、今後も拡大を続ける魅力的なビジネス領域です。