男性の美容が「身だしなみ」から「自己投資」へ変わる日本のメンズグルーミング市場の読み方
ニュースの概要
pando.lifeは、日本のメンズグルーミング製品市場が拡大を続けていると伝えている。洗顔料や化粧水、整髪料、ひげ関連用品といった従来の主力に加え、スキンケアやボディケアの需要が伸びているという内容だ。背景には、男性が肌や清潔感を気にする意識の高まりがある。オンライン購入の広がりや、若い世代を中心とした美容への抵抗感の低下も、市場を押し上げる要因として挙げられている。本稿では、この動きが一時的な流行なのか、構造的な変化なのかを切り分けて考えたい。
引用元: 日本のメンズグルーミング製品市場の最新動向(pando.life)
分析・見解
伸びているのは「買う人」ではなく「買う頻度」
男性向け美容市場の拡大というと、新しく買い始めた人が増えた話に聞こえる。だが実態はやや違う。すでに洗顔料や整髪料を使っていた層が、化粧水、乳液、日焼け止めと「品目を増やしている」ことが大きい。購入者数よりも、一人あたりの購入品目数と年間支出が伸びているのである。
この違いは重要だ。新規客の獲得は広告費がかさむが、既存客の品目拡大は、最初の一本で満足してもらえれば自然に進む。市場の伸びを支えるのは、最初の一本の体験の質だといえる。
動機が「モテたい」から「仕事で損をしたくない」に移った
以前の男性美容は、異性にどう見られるかが主な動機だった。いまは、職場やオンライン会議での第一印象という実利が前面に出ている。画面越しの会議では、肌の荒れやテカリ、眉やひげの乱れが拡大されて映る。身だしなみを整えないことが、仕事上の小さな損失になるという感覚が広がった。
動機が実利に変わると、買い方も変わる。見た目の派手さより、短時間で済むか、ベタつかないか、効果が説明できるかが選ばれる基準になる。時間をかけない美容、つまり「1分で終わるケア」への需要が強まっている。
世代ごとに入口がまったく違う
十代後半から二十代は、SNSや動画で情報を得て、韓国系ブランドや低価格帯から入る。三十代から四十代は、肌の悩みが具体的になり、薬用成分や皮膚科学に基づく商品を探す。五十代以降は、清潔感と若々しさの維持が中心で、家族や配偶者の勧めで買い始めるケースも多い。
同じ「メンズスキンケア」でも、棚の置き方や訴求の言葉は世代ごとに分けないと届かない。市場全体が伸びていても、一つの商品ですべての世代を取るのは難しい。
見落とされがちな独自の視点:競合は化粧品ではなく「時間」
男性美容の本当の競合は、他社の化粧水ではなく、朝の五分という限られた時間である。ケアが三工程に増えれば、続かない人が一気に増える。実際、スキンケアの定着率は工程数が増えるほど下がる傾向がある。これからの勝者は、成分の多さを競う企業ではなく、一本で複数の役割を果たし、使い続けても負担にならない設計を実現する企業になるだろう。オールインワンの人気は、その表れである。
ビジネスへの影響
最初の一本を「失敗させない」設計に投資する
メーカーや小売にとって、最優先は初回体験の質だ。小容量のお試しサイズ、使い方を一枚で示す説明、肌に合わなかった場合の返品対応を整えるだけで、継続率は大きく変わる。広告に使う予算の一部を、この入口の整備に回す価値は高い。
特に男性は、説明書を読み込まない傾向がある。パッケージ自体に「朝、洗顔後に二プッシュ」と書くなど、迷わせない工夫が効く。
売り場とECで、世代別に言葉を変える
EC事業者は、年齢や悩みごとに商品ページの見出しと比較表を分けるべきだ。二十代向けには価格と手軽さ、四十代向けには成分と実感できる変化、五十代以降には清潔感と続けやすさを軸にする。検索される言葉も世代で異なるため、サイトの記事やFAQもそれに合わせて用意したい。
定期購入と周辺カテゴリーで長く付き合う
一度定着した客には、日焼け止め、リップ、ボディケアへと広げる提案が有効だ。ただし押し売りは逆効果なので、使用状況に応じて勧めるのが望ましい。定期購入は、買い忘れを防ぐ仕組みとして男性に相性が良い。まずは解約しやすさを明確にし、信頼を積み上げることが近道になる。