ジレット「潤肌ジェル」が日本から世界へ。深剃りと肌荒れ対策を両立する男性シェービングの新基準
ニュースの概要
P&Gジャパンは、男性用シェービングブランド「ジレット」の新製品「ジレット 潤肌ジェル」を10月下旬から日本で先行発売すると発表した。日本の男性は清潔感を重んじ、髭を残さず剃る人が多い。そのため逆剃りで深く剃る習慣があり、カミソリ負けなどの肌トラブルも起きやすい。新製品は刃の全周360度に水に溶ける潤肌ジェルを配置し、順剃りでも逆剃りでも、ジェルが刃より先に肌へ触れる設計だという。日本の習慣を起点に開発し、世界に先駆けて発売する点が特徴だ。世界展開を見据えた製品が、まず日本で試される形である。日本の男性の髭剃りを巡る悩みに、道具の構造で答えようとする試みといえる。
引用元: ジレット、日本発の新製品「潤肌ジェル」を世界に先駆け発売(P&G Japan)
分析・見解
逆剃りという日本固有の習慣が設計の出発点になった
日本の男性は、清潔感を理由に髭を残さず剃る人が多い。深く剃るために、毛の流れに逆らって刃を動かす「逆剃り」も広く行われている。逆剃りは剃り残しが減る一方で、刃が肌を強くこするため、赤みやヒリつき、カミソリ負けの原因になりやすい。髭を整えて見せる文化が根づく地域と比べると、日本の「ゼロに近づける」剃り方は特徴的だ。
従来のジェル付きカミソリは、潤滑の帯(=すべりを良くする部分)が刃の片側にあるものが多かった。順剃りでは帯が刃の前に来るが、逆剃りでは向きが変わり、刃が先に肌へ当たってしまう。今回の新製品は、この構造上の弱点を正面から扱った点に意味がある。
刃の全周にジェルを置き、剃り方を変えさせない
新製品は、刃のまわり360度に水に溶けるジェルを配置する。どの向きに動かしても、ジェルが刃より先に肌へ触れる設計だ。ここで大切なのは、使う人に「正しい剃り方」を求めていない点である。肌に優しくするには順剃りだけにしましょう、という教育型の提案は、深剃りを重視する人には響きにくい。習慣を変えず、道具の側を変える。この発想は受け入れられやすい。
一方で、水に溶けるジェルは使うほど減っていく。何回の使用まで効果が続くのか、替刃の寿命とどう釣り合うのかは、使い心地の評価を左右するだろう。
世界に先駆けた日本先行発売が持つ意味
大手の海外ブランドは、本国や欧米で作った製品を各国向けに調整して出すことが多い。今回はその順序が逆になる。日本発の課題から製品が生まれ、日本で最初に売られる。
背景には、日本の消費者が肌への使い心地に細かい点まで気を配ることがある。男性のスキンケア市場が育つ韓国など、同じ悩みを抱える層は他のアジア諸国にも少なくないはずだ。日本での評価は、他の地域へ広げる際の試金石になる。日本は小さな市場ではなく、世界に売る前の厳しい試験場として使われ始めている。
電動シェーバーと競うには、肌への優しさの裏づけが要る
日本では電動シェーバーの存在感が大きい。肌への負担が小さいと考える人が多く、カミソリは深剃り派の選択肢という位置づけになりやすい。潤肌ジェルは、その深剃り派が抱える肌トラブルを減らす提案だ。電動に流れかけた人を呼び戻すこともできるかもしれない。ただし、肌がどれだけ楽になるのかを、使用者の実感だけでなく、試験の数字などで示せるかが問われる。シックや貝印といった競合も、同様の訴えを強めてくるだろう。
もう一つの論点は、替刃の価格である。付加価値が高いぶん価格も上がりやすく、毎回の買い替え負担が増えれば、通販の定期購入やドラッグストアでの比較に負けかねない。先行発売で得られる販売データと口コミは、その調整の材料になる。
ビジネスへの影響
自社の当たり前の習慣を点検し、製品づくりの起点にする
日本人の逆剃りのように、当事者には当たり前すぎて課題として意識されない習慣は、どの業界にもある。顧客に行動を変えてもらう前に、その行動を前提にした設計ができないかを考えたい。具体的には、顧客の使い方を動画で観察する、返品理由や問い合わせを使い方の観点で分け直す、といった方法が使える。「正しい使い方」を説明する資料が長い商品ほど、設計を見直す余地が残っている可能性が高い。
この作業に大きな予算は要らない。営業や窓口の担当者に、顧客が説明書どおりに使っていない場面を一つずつ挙げてもらうだけでも、改良の種は十分に集まる。
日本を先行市場にする判断に必要な三つの条件
海外本社を持つ企業の日本法人や、海外展開を考える国内メーカーにとって、日本先行の発売は選択肢になる。ただし条件がある。第一に、課題が日本だけでなく他の地域にも一定数あること。第二に、先行期間に何を測るかを決めておくこと。再購入率、肌トラブルの申告、口コミの内容などが候補になる。第三に、評価結果を本社や海外拠点へ共有する仕組みを持つこと。これがないと、先行発売は国内限定品で終わってしまう。
売り場では「逆剃りでも肌にやさしい」を一言で伝える
小売りや販売店は、新製品の違いを一言で説明できる売り場づくりが要る。「逆剃りでも肌にやさしい」のような具体的な言い方は、価格差の理由を伝えやすい。電動シェーバーの購入を迷う客への提案や、肌が弱い人向けの試用案内も有効だ。通販では、レビューにどの剃り方で使ったかを書いてもらう工夫が、次の購入者の安心につながる。メーカー側も、店頭担当者向けに短い説明資料と試供品を用意すれば、先行発売期の取りこぼしを減らせる。